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むくみ(浮腫)
むくみ(浮腫)とは
 むくみ(浮腫-ふしゅ)とは、血液中の血漿成分が血管やリンパ管の外に出て、皮膚の下に停滞した状態です。
 人間の身体全体を巡る血管には、心臓から送り出された血液がめぐっています。血液は動脈を通り身体の隅々に行き渡り、血液中の血漿が、細胞と細胞の間の細胞間液になって細胞に酸素や栄養を届けます。酸素や栄養を届けた細胞間液は、代わりに細胞で使われた二酸化炭素や老廃物を回収し、静脈やリンパ管を通って心臓に戻ります。
このとき静脈の働きが悪いとリンパに送られる細胞間液の量が増えて滞りを生じます。
このように血流が悪かったり、リンパ液の流れが悪いことで、細胞間液が血管に戻らず細胞と細胞の間に溜まってしまうことにより浮腫が起こります。

《浮腫の原因》
・塩分のとりすぎ
 塩(塩化ナトリウム(NaCl))は水に溶けるとナトリウムイオン(Na)と塩素イオン(Cl)に分かれます。このうち、浮腫に関係するのがナトリウムです。
血液中のナトリウムは主に細胞の外に存在し、カリウムは主に細胞の内に存在します。人間の体は、体内のナトリウム濃度を一定に保とうとするため、ナトリウム濃度が高くなると、それを薄めようとして、水分も一緒の増えるようになります。
 この浮腫を改善するためには、ナトリウム含量の多い食品や調味料を制限しなければなりません。
・長時間同じ姿勢を続ける
座りっぱなしや立ちっぱなしなど同じ姿勢で長時間いること、血液やリンパ液の流れが悪くなり、浮腫を生じやすくなります。
 足首に靴下の痕がくっきり付いてとれなかったり、足首付近を指でしばらく押さえて、指の痕がしばらく残れば、体が浮腫んでいると思われます。
 1日足をしたにしていると、重力で体液が足のほうにたまってくるため、夕方には足が浮腫みやすくなりますし、寝ている間は重力で水が身体に均等に分配されるので、朝は顔が浮腫んだように感じられます。
・運動不足、筋力低下
 筋肉は血管やリンパ管を収縮させ、血液やリンパ液を循環させるポンプの役割もして おり、特に足は第二の心臓と呼ばれます。
運動不足から、筋力が低下してしまわないよう、適度な運動が必要です。

 その他、冷えや基礎代謝の低下、ホルモンバランスの乱れ、アルコールの摂りすぎなども浮腫を起こす原因になります。

また、腎臓病、心臓病、肝臓病、血管の障害、リンパ管の障害、貧血、妊娠中毒症などでも浮腫を生じることがありますので、いつもと身体の調子が違ったり、長時間浮腫が続いたりするときには一度病院に行って診察を受けることも大切です。
《治療》
 内臓疾患など浮腫の原因が分かっている場合には、原因疾患の治療が行なわれます。場合によっては、合わせて利尿剤などが処方されます。
また癌の手術後に起きるリンパ浮腫などでは、それに合わせた専門の治療が行なわれます。
 それら以外の一過性の浮腫に対しては、生活養生やマッサージ、漢方治療などがメインになります。
漢方では?
 漢方治療では、まず浮腫を虚実で分けることが大切で、体表部の浮腫のうち、勢いが無く軟らかで、指で押すと凹んでもとに戻りにくいものを虚腫(キョシュ)、堅く勢いがあり、指で押してもすぐに戻ってくるものを実腫(ジツシュ)としています。
また、水の滞りによるものを水腫、血の滞りによるものを血腫としています。
 浮腫は五臓のどこの弱りからでも発生しますが、水飲代謝に直接関係する脾・肺・腎に起因するものが多くあります。
漢方古典の書物「金匱要略(キンキヨウリャク)」の"痰飲病篇(タンインビョウヘン)"には、異常な水分を停滞する場所によって、痰飲(タンイン)、懸飲(ケンイン)、溢飲(イツイン)、支飲(シイン)に分け、"水気病篇(スイキビョウヘン)"では、症状によって、風水(フウスイ)、皮水(ヒスイ)、正水(セイスイ)、石水(セキスイ)、黄汗(オウカン)に分け、また五臓によって心水、肝水、肺水、脾水、腎水の別があるとされています。
・心の弱りによる浮腫
 慢性的な心の弱りによる浮腫で、外感病または内傷の結果、心の気血不足、或いは心の陽気不足が生じたために起こる浮腫です。
肺虚や腎虚が心に波及したために引き起こされることもあります。
・肺虚による浮腫
 肺は"水の上源"で、脾よりもたらされた水飲は肺の働きによって、体表及び全身に配付されます。風寒や風熱などの外邪が肺気の働きを邪魔すると、三焦の水道が不通となり浮腫を生じます。
・脾虚による浮腫
 脾は水飲の吸収と運化を支配しています。脾虚がある上に、湿邪に当たったり、水分を過剰に摂取すると、水分が脾胃に停滞し、吸収排泄が障害されて、浮腫を生じます。
脾は四肢を主るので先ず四肢に浮腫を生じ、慢性化すると頭重、全身倦怠感、軟便下痢、嘔気などを伴うことが多くなります。
・肝虚による浮腫
 肝は疏泄を主り、水道である三焦と密接に関係しています。肝の疏泄作用が衰えて気の滞りを生じると、脾の水飲を運ぶことができなくなり、三焦の水道作用も働かなくなり水湿が全身に停滞して浮腫を生じます。
・腎虚による浮腫
 腎は全身の水飲代謝を支配しています。腎の陽気が衰えると水飲の循環や排泄が悪くなるので浮腫を生じます。
人は老化にともない腎の陽気が衰えるので、老人では腎陽虚による浮腫を起こしやすくなります。

・高温多湿の日本では昔から水毒の病が多かったためか、梅雨時の田んぼの手入れは健康な者でも足が浮腫んでしまうので、あぜ道にある十薬(ジュウヤク=どくだみ)を陰干しして利尿を目的として用いたり、冷えから膀胱炎を起こした女性は、土手に生えている夏枯草(カゴソウ=うつぼぐさ)で治療したり、小便を利し、水をめぐらす赤小豆を一日と十五日にお米と一緒に炊いて八百万の神々に感謝して、自らの身体も休めるなどの民間療法を伝えてきました。
症例
症例
36歳 女性 152cm 40kg
 足と顔の浮腫が気になるとご相談をいただきました。
症状を詳しく伺ったところ、浮腫はかなり前から続いており、偏頭痛、めまいなどが時々起こる。神経質でイライラしやすい。食が細い。排便(大小)問題なし。発汗正常。生理前から生理中にかけて症状の悪化がある。口渇は感じないが温かい飲み物をよく飲む。血色優れず、浮腫は軟らかく指で押すと痕が残る。

投薬と養生
 浮腫の状態から虚腫があり、血色が優れず、冷えを補うために温かい飲み物を欲していることから血虚もあると考えられます。神経を使い無理をして血が虚したために、肝虚となりイライラや偏頭痛も起こっていると考えて水のめぐりを良くする利水の剤の朮、茯苓、沢潟、血を増し巡りをよくし、筋の緊張を和らげる当帰、川芎、芍薬などの生薬の入った漢方薬を飲んでいただくことになりました。

 生活養生として、水分を取りすぎないよう気をつける。身体を冷やさないようにする。できるだけシャワーではなく湯船につかって身体を温める。などを実行していただくことにしました。
 また、気持を少し楽にして、何事にも10割を求めず、8割できたら自分をほめてげる。イライラしたときは呼吸を意識しながら、ゆっくり行ない気をめぐらせる。なども心がけていただくことにしました。

 服用1週間後あたりから、浮腫が少しずつ和らぎ、その後も飲み続けていただくことで、頭痛やめまいも減ってきました。
現在でも体調に合わせて服用していただいています。